弘前大学

【プレスリリース】「培養肉」 の受容性の確認と受容性向上の施策検討を目的とした 日本初の 「培養肉に関する大規模意識調査」 を実施(人文社会科学部)

2019.11.08

日清食品ホールディングス株式会社 (社長?CEO:安藤 宏基) と国立大学法人 弘前大学 人文社会科学部の日比野 愛子准教授の研究グループは、国立研究開発法人 科学技術振興機構 (JST) の「未来社会創造事業」の支援を受け、日本初の「培養肉に関する大規模意識調査」(対象:20歳から59歳までの一般男女2,000名) を行いました。本調査内容は、2019年11月10日(日)に行われる「第60回日本社会心理学会」(立正大学品川キャンパス) で発表します。

【調査実施の背景、目的】

世界的な人口増加やライフスタイルの変化により、将来、地球規模での食肉消費量の増加が見込まれています。一方で、家畜の生産には大きな環境負荷がかかることや、飼料や土地の不足が大きな問題となっています。動物の個体からではなく、細胞を体外で組織培養することによって得られる「培養肉」は、家畜を肥育するのと比べて地球環境への負荷が低いことや、畜産のように広い土地を必要とせず、厳密な衛生管理が可能といった利点があるため、従来の食肉に替わるものとして期待されています。
近年、世界中で行われている「培養肉」の研究のほとんどが「ミンチ肉」を作製する研究ですが、弊社と国立大学法人 東京大学 生産技術研究所の竹内 昌治教授の研究グループでは、肉本来の食感を持つステーキ肉を「培養肉」で実現する目標に向け、筋組織の立体構造を人工的に作製する研究に取り組んでいます。
しかし、「培養肉」は今までにない手法で作製された革新的な食品であることから、社会に受け入れられるかどうかは全くの未知数です。そこで、一般の方々にどの程度の受容性があるのか、どのような情報発信をしていけば「培養肉」の受容性が向上するのかを明らかにするため、「培養肉に関する大規模意識調査」を日本で初めて実施しました。

【調査結果】

「培養肉は世界の食糧危機を解決する可能性がある」という意見には55%の回答者が賛成を示しており(どちらともいえない:39%、反対:6%)、社会課題の解決策として一定の理解を得られていることが推測されました(図1)。ところが、「培養肉を試しに食べてみたい」と考える回答者は3割弱にとどまり、受容性向上の施策が必要であると考えられました(図2)。一方で、「培養肉」について聞いたことがある回答者に、「培養肉」が食料危機の解決につながる技術になる可能性があることや、「培養肉」が動物愛護に貢献する技術になる可能性があることを情報提示した場合に、「培養肉を試しに食べてみたい」と考える回答者が5割にまで増えることが明らかとなりました(図3、4)。以上の結果から、「培養肉」の受容性はまだ高いとはいえないものの、認知度を上げつつ、メリットをアピールすることで、一般の方々の「培養肉」の受容性が向上する可能性が示唆されました。
日清食品ホールディングスは、持続可能な社会の実現に向けて、今後も「培養肉」の研究を推進するとともに、「培養肉」の理解促進と社会需要形成に向け、適切な情報発信を行っていきます。
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