弘前大学大学院医学研究科附属子どものこころの発達研究センター所属の新川広樹特任助教が筆頭著者の論文「高等支援学校における集団ソーシャルスキル?トレーニングの実践―学校コミュニティの文脈への適合を目指して―」(共著者:清水理奈?粥川智恵?富家直明)が、日本ストレスマネジメント学会第四回優秀論文賞(山中寛賞)を受賞しました。本賞は学会機関紙『ストレスマネジメント研究』に2020年度内に掲載された論文の中で、研究の科学的整合性、論究の妥当性、発展性にかかる審査において最も高い評価を得た論文に贈られる名誉ある賞です。
本研究は、高等支援学校において就業体験を控えた3年生の生徒43名を対象として、集団形式で「ソーシャルスキル?トレーニング」とよばれる対人コミュニケーション技能の向上を目的とした予防的介入を実施し、その効果を検証したものです。介入にあたっては、コミュニティ?アプローチの手法に則って、学校現場と協働しながら既存のプログラムを対象集団に最適化するための手続きを経ており、「仲間がミスをしても責めずに感謝を伝える」「相手の説明が理解できなかったときに援助を求める」などの失敗?対処困難場面におけるスキルに焦点を当てたプログラムが構成されました。結果として、介入前後で学年全体のソーシャルスキルの向上が客観的評価によって認められ、さらに高リスク者のストレス反応が就業体験後に改善していました。本研究で得られた知見は、対象校のニーズに応じた「テーラーメイド」な予防的介入が、体系的なプロセスを通して実現可能であることを示唆するものであり、理論と実践の橋渡しを担うことが期待されます。
新川広樹特任助教