ウェスタホーベン元弘前大学教授がオランダの翻訳賞を受賞
2021.05.06
受賞?表彰
2013(平成25)年まで弘前大学教育学部で教授を務めたジェームズ?ウェスタホーベン氏が、母国オランダにおいて翻訳者の功績を称えるもっとも栄誉ある賞、マルティネス?ネイホフ翻訳賞(Martinus Nijhoff Vertaalprijs 2020)を受賞しました。本翻訳賞では、毎年一人の外国文学の翻訳で活躍する翻訳者が表彰されています。ウェスタホーベン氏は、弘前大学在任時から現在に至るまで、多くの日本文学をオランダ語に翻訳してきた功績が認められ、受賞が決まりました。2020(令和2)年3月20日に授賞式が開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の状況により延期?中止となり、2021(令和3)年1月にメダルが手元に届いたということで、ウェスタホーベン氏が弘前大学に報告に訪れました。
ウェスタホーベン氏は谷崎潤一郎、三島由紀夫、大江健三郎、村上春樹、五味川純平、井上靖などの日本文学をオランダ語に翻訳、出版しており、2000年には奥泉光『石の来歴』のオランダ語翻訳で野間文芸翻訳賞を受賞しました。今回の受賞にあたっては、2018年1月に五味川純平の「人間の條件」を欧米語圏の言語で初めて翻訳し、出版したことが特に高く評価されました。
日本文学の翻訳についてウェスタホーベン氏は、「一昔前、日本人は欧米人から“謎の多い東洋の民族”と思われていた。しかし私は日本人もふつうの人間であり、理解できないわけがないと思っていた。谷崎潤一郎の『細雪』では登場する4姉妹の日常や心情を通して日本人の考え方が理解でき、翻訳書は大変評判がよかった。五味川純平の『人間の條件』では戦時中日本兵がおかれた過酷な状況をオランダ国民に初めて伝える契機になった。日本人の精神が伝わる作品の翻訳を続けていきたい。」と話し、意欲を見せました。
また、大188体育官网-【体育娱乐】@に対して「活字離れというが、まずは自分の国の本を読んでほしい」と話し、「昔の日本文学には今は使われなくなった言葉遣いがある。自国の言語の深さ、すばらしさを理解してから、海外文学を翻訳でもいいから読んでほしい。海外文学を読めば、その文化をもつ人たちの精神が少し理解できるようになる。『井の中の蛙』という言葉があるが、隣の池に行くだけで新しい世界が現れる。ぜひ世界を広げてほしい。」とエールを送りました。