2021(令和3)年7月27日(火)、北海道、青森県、岩手県、秋田県の17遺跡で構成される「北海道?北東北の縄文遺跡群」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産への登録が決定しました。日本の世界文化遺産はこれで20件目です。
弘前大学では前身の旧制弘前高等学校時代に亀ヶ岡石器時代遺跡(つがる市)の発掘調査を実施するなど、長い考古学研究の歴史を持っています。1988(昭和33)年に故?村越潔名誉教授が教育学部に着任、大学としての考古学研究が始まります。この頃、大森勝山遺跡や二ツ森貝塚などの調査研究が進められました。その後、1998(平成10)年に人文学部(現:人文社会科学部)に文化財論講座が設置され、考古学にかかる教育?研究が続けられています。
2005(平成17)年には亀ヶ岡文化研究センター(現:北日本考古学研究センター)を設立し、2009(平成21)年には故?成田彦栄氏の収集品の寄贈を受けて特別展示室を設置しました。成田彦栄氏は戦後の三内丸山遺跡や亀ヶ岡遺跡の調査を地元で主導した人物の一人であり、明治期に学界に紹介された遮光器土偶の原画など学史的に貴重な資料を散逸しないようその保全に尽力しました。現在、センターではその意思を引き継ぎつつ、地域の貴重な埋蔵文化財の価値を明らかにするとともに、適切に保護し、将来に伝えていく役割を担っています。センターを中心に、文理融合型の学際研究プロジェクトや、学外からの受託?共同研究にも積極的に取り組んできました。
今回世界文化遺産への登録が決定した「縄文遺跡群」の構成資産のなかでは、現在、弘前市:大森勝山遺跡、つがる市:亀ヶ岡石器時代遺跡などの史跡整備に関する委員を務めるほか、七戸町:二ツ森貝塚館、八戸市:是川縄文館の受託?共同研究に取り組んでいます。
今回の決定について弘前大学人文社会科学部北日本考古学研究センター長の上條信彦教授は、「まずは長年の活動に対し関係者の皆様へ敬意を表します。多様性と弾性?回復力(レジリエンス)が注目される現在、縄文時代は同じ社会や精神性をもちつつも、生業の多様性によって、気候変動に対しても長期間、適応してきたといわれています。登録後はその保全とともに、この地域に関する新しい知見を発信し続けることも重要です。大学は自治体ではコスト面で難しい課題を学術面でサポートしていくことができます。本登録をきっかけに縄文時代全体の理解と研究発展につながっていけばと存じます。」と喜びと今後の展望を語りました。
■弘前大学人文社会科学部北日本考古学研究センターホームページ
http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kitanihon/kitanihon.html