弘前大学

りんご搾汁残渣の新たな機能性を発見-認知症予防に有用か?-

2024.01.22

プレスリリース内容

本学研究グループ

弘前大学農188体育官网-【体育娱乐】@命科学部 食料資源学科 中島 晶 教授(農188体育官网-【体育娱乐】@命科学部ホームページ「教員紹介」へ)
弘前大学農188体育官网-【体育娱乐】@命科学部 食料資源学科 前多 隼人 准教授(研究者総覧の「研究者」ページへ)

本件のポイント

  • りんご搾汁残渣から開発した食品素材が認知症モデルマウスにおける記憶障害を改善
  • りんご搾汁残渣がマウス脳における遺伝子発現に影響
  • りんご搾汁残渣の認知症予防における有用性について今後の研究に期待

本件の概要

青森県の特産品であるりんごの搾汁残渣は、そのほとんどが産業廃棄物として堆肥処理されています。一方、りんごの搾汁残渣にはグルコシルセラミドやトリテルペノイドなどの成分が含まれており、疾病の予防、改善に有用な食品素材となる可能性がありますが、記憶障害に対する効果についてはこれまでに研究されていませんでした。

今回、弘前大学農188体育官网-【体育娱乐】@命科学部の中島 晶 教授と前多 隼人 准教授のグループは、日本ハルマ株式会社との共同研究で、りんご搾汁残渣から開発した食品素材注1)が認知症モデルマウスにおける記憶障害を改善することを明らかにしました。また、この食品素材に含まれるグルコシルセラミド注2)の種類について解析しました

りんご搾汁残渣から開発した食品素材をマウスに経口投与することにより、受動的回避試験注3)および新奇物体認識試験注4)において、NMDA受容体遮断薬注5)であるMK-801により引き起こされた記憶障害が改善しました(図1および図2)。また、マウス脳における網羅的遺伝子発現解析の結果、この食品素材の投与により、”synapse注6)” や ”neurotransmission注7) “に関連する遺伝子セットの発現が上昇していました。

以上の結果より、りんご搾汁残渣から開発した食品素材は脳における遺伝子発現に影響を与え、記憶障害を改善した可能性が示唆されます。本成果により、りんご搾汁残渣から開発した食品素材の認知症予防における有用性について、今後の研究が期待されます。また、産業廃棄物であるりんご搾汁残渣の新規活用方法の開拓が期待されます。

本研究成果は、2024年1月6日に国際科学誌「 Nutrients」にオンライン掲載されました。

用語解説

  • 注1)りんご搾汁残渣から開発した食品素材:りんご搾汁残渣に含まれているグルコシルセラミド、ウルソール酸、ポリフェノールの食品素材は、サプリメントなどの健康食品として用いられる。
  • 注2)グルコシルセラミド:セラミドにグルコースが結合したスフィンゴ糖脂質の1種。
  • 注3)受動的回避試験:電気刺激と暗室との連合記憶を評価する試験。訓練試行では、マウスを明室に入れ暗室に移動したら電気刺激を与えます。保持試行では、マウスを明室に入れ暗室に入るまでの時間(反応潜時)を計測します。反応潜時は連合記憶の指標として用いられます。
  • 注4)新奇物体認識試験:認知記憶を評価する試験。訓練試行では、2つの物体を設置した実験装置にマウスを入れ、マウスがそれぞれの物体を探索する時間を計測します。保持試行では、2つの物体のうち1つを新奇物体に交換した実験装置にマウスを入れ、マウスがそれぞれの物体を探索する時間を計測します。総探索時間に対する新奇物体に対する探索時間の割合を探索嗜好性として算出し、認知記憶の指標とします。
  • 注5)NMDA受容体遮断薬:N-methyl-D-aspartate (NMDA)受容体は神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体であり、記憶形成に重要な役割を果たしています。NMDA受容体遮断薬であるMK-801を受動的回避試験や新奇物体認識試験の訓練試行の前に投与することにより、記憶障害が引き起こされます。
  • 注6)synapse(シナプス):神経細胞同士が接続している部分で、ここで神経細胞から他の神経細胞に神経伝達物質により情報が伝達されます。
  • 注7)neurotransmission(神経伝達):シナプスにおいて、神経終末から神経伝達物質が遊離し、他の神経細胞の受容体に結合して情報を伝達する過程。

論文情報

  • [論?名]Apple Pomace Extract Improves MK-801-Induced Memory Impairment in Mice
  • [著書名] Ayako Watanabe1,2, Minori Shimada1, Hayato Maeda1,2, Tsuyoshi Narumi3, Junji Ichita3, Koh Itoku3 and Akira Nakajima1,2
  • [所属]1.弘前大学農188体育官网-【体育娱乐】@命科学部、2.弘前大学大学院地域共創科学研究科、3.日本ハルマ株式会社
  • [掲載誌] Nutrients(doi.org/10.3390/nu16020194)

プレスリリース

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本学お問合せ先

弘前大学農188体育官网-【体育娱乐】@命科学部 中島 晶 教授
TEL:0172-39-3787
E-mail:anakajimhirosaki-u.ac.jp