弘前大学

サケ鼻軟骨由来成分「プロテオグリカン」のマウスでの育毛効果に関する研究概要について

2024.02.01

プレスリリース内容

弘前大学(188体育官网-【体育娱乐】@:福田 眞作)とダイドーグループホールディングス株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:髙松 富也)の事業会社であるダイドードリンコ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:中島 孝徳)は、以下の内容で研究成果につきまして発表いたします。

研究成果

サケ鼻軟骨由来の成分である「プロテオグリカン」に、育毛効果があることを見出しました。この効果は、毛乳頭細胞の増殖と血管新生因子の発現上昇によって生じることが示唆されました。

脱毛は多くの人に共通する問題の一つであり、QOL(quality of life;生活の質)を低下させる原因でもあります。サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンは、サケの鼻軟骨を原料に酢酸抽出することで得られる成分であり、プロテオグリカンは軸となるコアタンパク質に多数のグルコサミノグリカン注1)が結合する複合体であり、コアタンパク質のN末端注2)にはヒアルロン酸結合領域を持ち、C末端注2)にはEGF様領域注3)を持つことが知られています。育毛研究において、EGF受容体を介した育毛効果がいくつか報告されています。そこで本研究では、オスC3H/HeNマウス注4)を剃毛し、プロテオグリカンの育毛効果を検討しました。また、ヒト毛包毛乳頭細胞(HFDPCs)にプロテオグリカンを添加することによって、メカニズムを検討しました。

C3H/HeNマウスを剃毛し、3日目以降にプロテオグリカンを経口投与し、育毛面積を評価しました。剃毛後22日に、プロテオグリカンを投与しないマウスと比較してプロテオグリカン投与マウスにおいて、育毛面積が有意に増加しました(図1)。そのメカニズムとしてHFDPCsを用いて細胞増殖能と血管内皮細胞増殖因子(VEGF)注5)産生量を評価したところ、プロテオグリカン無添加群と比較してプロテオグリカン添加によって、細胞増殖とVEGF産生量が有意に増加しました(図2)。以上のことから、プロテオグリカンが毛乳頭細胞増殖とVEGF産生量の増加を通して、育毛を促進させることが示唆されました。

研究代表者

国立大学法人弘前大学大学院医学研究科
中根 明夫 特任教授

ダイドードリンコ株式会社 ヘルスケア事業部 通販商品開発グループ
藤本 直樹

用語解説

注1)グルコサミノグリカン
分岐を持たない長い直鎖構造を持つ糖鎖の総称である。多数の硫酸基とカルボキシル基を持つため負に荷電しており、糖の持つ水親和性により、多量の水を保持することができる。

注2)N 末端、C 末端
タンパク質はN 末端からC 末端に合成される。N 末端はアミノ基を持っており、C 末端にはカルボキシ基を持つ。

注3)EGF 様領域
EGF(Epidermal Growth Factor)は上皮成長因子であり、細胞の成長および増殖において重要な役割を担う。年齢を重ねるごとにEGFは減少することが判明しており、このため新陳代謝や細胞の再生能力が衰えると考えられている。

注4)C3H/HeN マウス
毛周期が安定しており、LPS に対し感受性があるマウスである。雄の肝癌発生率が高いことも特徴であり、免疫?がん研究や発毛研究に用いられる。

注5)血管内皮細胞増殖因子(VEGF)
血管新生を促進させるタンパク質であり、血管内皮細胞にVEGFが作用することで、細胞分裂や分化などを誘導し、既に存在する血管から分岐した血管が新たに形成される(血管新生)。

研究資金

本研究は、弘前大学とダイドードリンコ株式会社との共同研究契約に基づいて実施されました。

論文情報

  • 題 名:Salmon nasal cartilage proteoglycan stimulates hair growth
  • 著者名:Akio Nakane, Shouhei Hirose, Noriaki Kawai, Naoki Fujimoto, Eriko Kondo, Krisana Asano
  • 掲載誌:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry Volume 88, Issue 1, January 2024
  • URL:https://academic.oup.com/bbb/issue/88/1
  • 掲載日:2023年12月20日
  • DOI:10.1093/bbb/zbad149

プレスリリース

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本学お問合せ先

弘前大学大学院医学研究科 特任教授 中根 明夫
TEL:0172-39-5033
E-mail:bacthirosaki-u.ac.jp