ダウン症候群に合併した骨髄性白血病の新規原因遺伝子と予後因子を発見
2024.04.05
研究
プレスリリース内容
本件のポイント
- 本研究では、ダウン症候群に発症する血液がんの大規模遺伝子解析を実施しました。その結果、ダウン症候群に伴う骨髄性白血病(以下ML-DS)の新規ドライバー遺伝子 1) を多数発見し、ML-DSの発症に関わる遺伝子変異の全体像が明らかになりました。
- 同一の化学療法を受けた177名のML-DS患者の予後解析から、CDKN2A、TP53、ZBTB7AとJAK2遺伝子の変異が予後不良と関連することを明らかにしました。
- 今回の研究成果は、ML-DSの発症機構の解明に役立つとともに、本症の治療戦略や治療法の開発に繋がると考えられます。
本件の概要
ダウン症新生児の5?10%には、一過性異常骨髄増殖症(以下TAM)と呼ばれる前白血病が発症します。その多くは自然寛解しますが、約20%は真の白血病であるML-DSを発症します。以前、我々はTAMからML-DSへの進展に関与するコヒーシン複合体などの遺伝子変異を発見しましたが、全貌を解明するには解析症例数がまだ十分ではありませんでした。また、ML-DSは化学療法への反応が良好で約80?90%の症例が長期生存しますが、再発例や寛解困難例の予後は極めて不良です。しかし、どのような患者さんが予後不良群になるかは予測不能でした。
弘前大学大学院医学研究科地域医療学講座 伊藤悦朗特任教授(令和2年度まで同小児科教授)と同小児科学講座 佐藤知彦助教、金崎里香助教、土岐力講師、照井君典教授らと京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座 小川誠司教授らのグループは、国立がん研究センターがん進展研究分野 吉田健一分野長、筑波大学医学医療系解剖学発生学講座 高橋智教授、京都大学大学院医学研究科臨床統計学講座 田中司朗特定教授らとの共同研究により、143例のTAM、204例のML-DS、34例の非ダウン症児に発症した急性巨核芽球性白血病(以下AMKL)に対して網羅的遺伝子解析を行ない、本症にみられる遺伝子異常の全体像を解明し、4つの予後不良因子(CDKN2A、TP53、ZBTB7AとJAK2遺伝子変異)を見出しました。
本研究成果は、米国血液学会誌「Blood」(米国時間2024年3月21日(木)付の電子版)に掲載されました。
用語説明
- 1)ドライバー遺伝子?ドライバ:異常をきたすことで、がんの発生?進行などの直接的な原因となる遺伝子のこと。がん遺伝子とがん抑制遺伝子からなる。ドライバー遺伝子に生じ、がんの発生や進行に関与する異常をドライバー(ドライバー異常)と呼ぶ。
詳細
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プレスリリースに関するお問合せ先
弘前大学大学院医学研究科地域医療学
特任教授 伊藤悦朗
TEL:0172-39-5070
E-mail:eturouhirosaki-u.ac.jp