弘前大学教育学部 技術教育講座 木材加工研究室(廣瀬孝准教授)と有限会社アサヒ印刷は、りんごの剪定枝を使った糸を開発し、これを生地化して繊維製品に活用することに成功しました。
2024(令和6年)6月24日、木材加工研究室にて報道機関向けに試作品の発表が行われました。
両者による研究成果は2023年度弘前大学共同研究トライアルファンドに採択されたことで実現。りんご生産量日本一を誇る青森県において、薪などの燃料として使われる以外ほとんど有効活用されていない“厄介者”とされてきたりんご剪定枝を再資源化?商品化を目指したアップサイクルプロジェクトです。
昨年10月にりんご剪定枝から板材を作ることに成功していましたが、今回新たに「りんごの布(仮称)」としてさらなる再資源化の道を開拓しました。
針葉樹に比べ繊維が短い広葉樹であるりんご剪定枝のパルプを用いて糸用の薄葉紙(うすようし)に加工するのは困難だったとのことですが、この難題を乗り越えて薄葉紙にし、細くカットしたものを撚ることで糸にすることができました。これに既存の和紙糸(キュアテックス?)と織ることで生地化、繊維製品としての活用に成功しました。
今回の成功には、廣瀬准教授がこれまでに取り組んできた高速道路間伐材(ニセアカシア)の糸化?繊維製品化の知見を活かし、欠点を改善する試みを施したため、ニセアカシアに比べて強度があって切れにくくなっています。
■高速道路間伐材由来パルプを混合した紙(薄葉紙)を糸化、シャツ等を試作しました
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会見では日本酒「弘前大学」の箱にピッタリな日本酒用のバッグにエプロンや帽子、タブレットケースなど様々な試作品がお披露目されました。それぞれ製品に合わせた編み方がされていて触り心地のよい仕上がりとなっています。
廣瀬准教授は「今後さらに研究を推し進めて、りんご剪定枝のパルプの配合率をより高めていきたい」と展望を語りました。
アサヒ印刷の漆澤知昭代表取締役は「大学や地域の企業と協力し、地域経済に貢献できる青森県の新しい魅力、価値を発信する商品づくりをしたい」と話し、齊藤元専務取締役は「剪定は桜に見られるように、樹の力を最大限活かす伝統的な技術であって決して悪いわけではないが、労力がかかってかつ廃材を出している現実がある。これを活かした製品を作ることで剪定イコール悪ではなく、剪定によりいいものが生まれると知ってもらうことで栽培方法の発展や維持の一助になれば」と今回の成果の意義を語りました。
今後は配合率や強度、その他の条件をさらに検討し、量産化に向けてのチャレンジがスタートする予定です。
関連情報
弘前大学公式ウェブマガジンHIROMAGA「未利用資源に新たな価値を!りんご?さくら剪定枝で和紙づくり」
https://www.hiromaga.com/20210521-7191/
【弘前大学 研究室探訪!】~教育学部 木材加工研究室(廣瀬孝准教授)編~
https://www.hiromaga.com/20221216-10914/