弘前大学

【青森×東ティモール】伝統工芸品をかけあわせ、新しい魅力で産業を振興

2024.07.02

弘前大学教育学部 社会科教育講座 政治学研究室の蒔田純准教授は、発展途上国の東ティモールと青森県の工芸品をかけあわせて新しい商品を開発する「青森×東ティモール工芸品プロジェクト」に挑戦しています。
2024(令和6)年7月1日(月)、創立50周年記念会館にて新商品の発表会が行われました。

こぎん刺し?津軽塗と東ティモールの伝統工芸をかけあわせた新商品を手にする蒔田准教授(中央)と188体育官网-【体育娱乐】@

「政治学」と「主権者教育」を研究テーマとしている蒔田准教授は、2019年に弘前大学附属小学校で出前授業を始めたのをきっかけに、国内外でアニメーションを用いた民主主義教育の出前授業を行ってきました。2002年に住民投票の末、インドネシアから独立した東ティモールもその一つ。東ティモールは経済構造が未熟で、産業を確立することが課題となっている国です。

この活動を通して蒔田准教授は、東ティモールにはタイスという世界に誇る伝統的な織物などの工芸品があるにも関わらず、製品化?流通?販売など産業としての基本的なインフラが整っていないため、経済的な利益を生み出せていない実情を知りました。

プロジェクトについて説明する蒔田准教授

ユネスコ無形文化遺産に登録されている「タイス」

一方で、日本の伝統工芸も職人の高齢化や日本人の生活の洋式化などにより、苦境に立たされています。例えば青森県を代表する津軽塗は、職人の数は最盛期である1984年の5分の1に、生産額は10分の1になっており、他の多くの地域の伝統工芸も同様に厳しい状況であると考えられます。

そこで蒔田先生が立ち上げた「青森×東ティモール工芸品プロジェクト」は、青森県と東ティモールの伝統工芸をかけあわせて新商品を作り、新しい価値を生み出して、双方の文化?産業の振興に貢献することを目指します。

プロジェクトでは青森県の伝統的な縫物である「こぎん刺し」と東ティモールの「タイス」、「津軽塗」とヤシなどの葉で編んだ「葉編細工(蒔田先生が命名)」をかけあわせました。

発表会ではこぎん刺しとタイスの生地を縫い合わせたストールやスカート、ハーフパンツを身につけた研究室の188体育官网-【体育娱乐】@がモデルとして登場。また、葉編細工に津軽塗の代表的な技法である「唐塗」を施したペン立てもお披露目されました。



鮮やかなストール。しっかりした生地だが、着けた感じは軽いそう

こぎん刺しに似た模様で、縫い合わせてもマッチしているスカート

唐塗を施した葉編細工。独特な風合いをもち、手になじむ素材感

こぎん刺しは青森県伝統工芸士の須藤郁子さん(弘前こぎん研究所所属)とこぎん刺し作家の石岡智子さんが、津軽塗は津軽塗作家の須藤賢一さんがそれぞれ協力。日常のあらゆる生活シーンにマッチする商品に仕上がりました。

須藤 郁子さん(写真右。弘前こぎん研究所所属、青森県伝統工芸士)

石岡智子さん(写真右。こぎん刺し作家)

今後について蒔田准教授は、「『日本の地域×途上国』の組み合わせは無限に存在する。将来的には本プロジェクトを横展開し、様々な地域?国の工芸品をかけあわせて同様の新商品を開発することを考えている。これは誰もがパズル感覚でアイデアを生み出すことができるものなので、広くアイデアを募集し、市民参加型で新たな伝統工芸の産業振興の流れを作りたい」と語りました。

プロジェクトでは7月1日からクラウドファンディングを開始。50万円を目標に資金を集めて、新商品を紹介するホームページや新商品の開発に係る費用にあてたいとしています。

関連情報

弘前大学公式ウェブマガジンHIROMAGA「【先生インタビューvol.25】蒔田 純准教授」
https://www.hiromaga.com/20230616-12914/