弘前大学

深部流体によって誘発された能登半島地震 -内陸の大地震の発生ポテンシャルの評価手法の開発-

2024.07.03

プレスリリース内容

本学研究者

大学院理工学研究科 教授 梅田 浩司(「研究者総覧」の研究者ページへ)

本件のポイント

  • 2024年1月1日に発生した能登半島地震やそれに先行した群発地震は、マントルから地殻に流入した深部流体によって引き起こされました。
  • 2007年能登半島地震(M6.9)も今回と同じ起源の深部流体が原因と考えられます。
  • マントル起源物質を含む深部流体の分布やフラックスを明らかにすることにより、内陸の大地震の発生ポテンシャルの高い地域を事前に知ることができる可能性があります。

本件の概要

弘前大学大学院理工学研究科の梅田浩司教授、東京大学先端科学技術研究センターの角野浩史教授らの研究グループは、2024年1月1日に発生したマグニチュード7.6の能登半島地震の前年に、能登半島全域の井戸から温泉水(地下水)を採取し、化学組成?同位体組成の測定を行いました。その結果、今回の地震に先行して発生していた群発地震や2007年能登半島地震の震源域では、大気の2~4倍といった高いヘリウム同位体比1) 3He/4He比)が観測されました。また、梅田教授らは、2007年にも同様の調査を行っていますが、上記の震源域では当時も高いヘリウム同位体比が認められています。さらに、これらの震源域の地下から地表に上昇している3Heフラックス2) (を見積もったところ、1.1~2.5×10-15mol/cm2/年という値が得られました。この値は、1906年サンフランシスコ地震(M7.8)、1999年イズミット地震(M7.4)、2009年ニュージーランド西岸地震(M7.8)などの大地震を引き起こした断層の周辺で観測された値と同程度でした。このことは、マントル起源物質を含む深部流体の分布やフラックスを明らかにすることにより、大地震の発生ポテンシャルの高い地域を予め把握できる可能性があることを示しています。本研究成果は、米国科学誌「Geophysical Research Letters」にオンライン掲載されました。(2024年6月28日)

用語説明

  • 1)ヘリウム同位体比(3He/4He比):ヘリウムには質量数3と4の安定同位体が存在し、主に3Heは地球形成時に固体地球内部に取り込まれた始原的な成分、4Heはウランやトリウムの放射壊変で生成したもの。マントル中のヘリウムの3He/4He比は、地殻や大気に含まれるヘリウムのそれよりも高いため、温泉水中の3He/4比が高い場合には、マントル起源物質を含む深部流体が混入していると解釈することができる。
  • 2)フラックス:単位面積?単位時間あたりの流量。ここでは地中のある1平方センチメートルの領域に対して、地下から地表に向けて3Heが年間1.1~2.5×10-15 mol(個数として7億~15億個)が通過していることを意味する。

論文情報

掲雑誌:Geophysical Research Letters
論文タイトル:Geochemical signature of deep fluids triggering earthquake swarm in the Noto Peninsula, central Japan
著者:Koji Umeda, Yukino Yamazaki, Hirochika Sumino
巻?号?頁:51 巻,16 号,e2024GL108581_1~10
DOI:0.1029/2024GL108581
URL:https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/journal/19448007

詳細

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プレスリリースに関するお問合せ先

弘前大学大学院理工学研究科 教授 梅田 浩司
TEL:0172-39-3952
E-mail:umedahirosaki-u.ac.jp