白神自然環境研究所と大学院理工学研究科寒地気象実験室は、平成26年3月に本学にXバンド気象ドップラーレーダーが開設されたことを記念して、創立60周年記念会館コラボ弘大八甲田ホールにおいて、9月27日から28日までシンポジウムを開催しました。ひろだい白神レーダーと名づけられた本レーダーは、防衛関係を除くと青森県内に設置された初の気象レーダーであり、観測域は白神山地全域を含む津軽地方全域に及び、これまで隣県の気象レーダーにより観測されるのみであった津軽の空を見守る新しい眼というべき存在です。世界自然遺産白神山地の生態系を維持する水環境の研究や津軽地方の気象の研究はもとより、大雨や大雪などの防災のための利用にも地域から高い関心が寄せられています。本気象レーダーの活用について議論することを目的としたこのシンポジウムは、本学大学院理工学研究科自然防災研究センターの後援を受け、青森地方気象台、国土交通省青森河川国道事務所、アップルウエーブ(株)、青森県、弘前市、他、計10団体からの協賛を受けて実施されました。参加者は2日間で延べ123人におよび、会場では活発な質疑討論がなされました。また、会場では白神自然環境研究所の兼任教員が現在開発中のシステムによるレーダー観測動画が紹介され、参加者の注目を集めていました。
初日の基調講演では、白神山地の生態系における降雨降雪の重要性が強調され、津軽地方の天然ダムといえる白神山地の水循環の研究が紹介されるなど、レーダーによる観測への期待が表明されました。また、外部講師として招いた2名のレーダー観測の専門家からは、これまで国内外で行われたXバンドレーダーによる様々な気象観測結果が紹介され、青森県で期待される気象学的な研究のテーマが提案されました。
2日目は、地元の豪雨?豪雪?地すべりの研究事例や、現在開発中のレーダーの動画公開システムの紹介が行われました。最後に行われた総合討論では、防災を担当する官署である青森地方気象台と国土交通省青森河川国道事務所や、地元自治体の弘前市から、本レーダーによる観測結果の利用について強い期待が述べられました。また、大学側のレーダー運営担当者からは、気象予報まではできないが、地域での利用のために本レーダーの画像データを公開することが説明され、地域の気象防災には、防災を担当する官署と自治体、民間気象事業者、大学などの連携や情報交換が重要であり、本レーダーがそのきっかけになればという期待が述べられました。